「今の高校がつらい」「環境を変えたい」と感じながらも、「転校は難しい」と聞いて不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
全日制からの転校を考えてHR高等学院に相談に来る学生や保護者の方に、私が最初にお伝えしていることは、「全日制高校から別の全日制高校への転校は難しい」という事実です。
欠員が出ないと募集がない・転入試験がある・募集時期が限られていることが理由です。
一方で通信制高校への転校であれば、定員や時期の制限が少なく、比較的入りやすい環境が整っています。この記事では、全日制高校への転校が難しい具体的な理由や転入試験の実態、公立・私立ごとの受け入れ条件、通信制高校という選択肢について解説します。
転校の具体的な手続きについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
高校の転校が「難しい」と言われる3つの理由
「高校の転校は難しいですか」と相談に来られる保護者や学生に、私は「難しいとされているのは、全日制高校から別の全日制高校へ転校する場合です」とお伝えしています。
その理由は、「欠員」「転入試験」「募集時期」という3つの壁があるためです。それぞれに具体的に解説します。
欠員がなければ転入の募集自体がない
全日制高校は学年ごとに定員が決められているため、退学者などが出て欠員が生じた学校しか転入募集を行いません。特に人気のある学校では欠員が出にくく、募集があっても「若干名」にとどまるケースがほとんどです。
たとえば都立高校の場合、転入の募集は年3回の学期ごとに実施しています。
東京都教育委員会の「令和8年度第二学期都立高等学校転学・編入学募集の実施結果」によると、全日制(一般区分)の募集人員9,937人に対し、実際の応募者は332人、合格者は119人でした。
一見すると募集枠に対して応募者が少ない印象を受けますが、募集が出ていても、希望する学校や学年とは限りません。また都立高校では、出願前に志願先で単位の照合を受ける必要があり、どの学校にでも出願できるわけではありません。
出典:東京都教育委員会 令和8年度第二学期都立高等学校転学・編入学募集の実施結果
転入試験では「学力検査」が行われる
転入試験は、中学のときに経験した高校入試とは異なり、転入先の学校が定めた方法で選考が行われます。原則として国語・数学・英語の学力検査と面接が行われますが、検査の内容や出題範囲などは学校によって異なるため、志望校への確認が必要です。
今の高校で授業についていけなかったり、休みがちになっていたりする状態であれば、転入試験の準備と学校生活を両立することが負担になることもあります。
今すぐ転校したくても、次の募集まで待つことがある
全日制高校の転入募集は、主に学期の変わり目(4月・9月・1月頃)に限られるため、今すぐ転校したいと思っても、次の募集まで数か月間待たなければならない場合があります。私の感覚では、転入の相談は夏休み明けの9〜10月頃がいちばん多くなります。1学期の出席日数が不足し、進級が難しいと学校から告げられた高校1・2年生からの問い合わせが多くなっています。
転校を考える時期と募集時期にはズレが生じやすく、待機期間が発生する場合があります。その間に欠席が続くと、単位認定に影響して転入先へ引き継げる単位が減り、卒業時期が遅れる可能性があります。
転入試験はどれくらい難しい?都立高校の実施結果で見る合格率
全日制高校の転入試験について、「実際の難易度」を都立高校の実施結果データをもとに解説します。あわせて、実際の試験科目や面接で問われるポイントも見ていきましょう。
受検者の4割弱が合格し、学年が上がるほど狭き門になる
令和8年度第二学期(2026年夏)に行われた都立全日制高校(一般区分)の転学募集結果は以下の通りです。
全体では受検者の約37%が合格しており、前年度(令和7年度第二学期:受検272人・合格124人)の約46%を下回りました。
学年別の内訳を見ると、合格者の8割以上は高校1年生です。高校2年生以降は応募者自体が少なく、合格者も第2学年15人・第3学年2人にとどまります。受検者に占める合格者の割合も、第1学年が約38%、第2学年が約32%、第3学年が約29%と、学年が上がるほど低くなっています。
このことから、都立の全日制に転入できた人の大半は高校1年生で、学年が上がるほど応募も合格も少なくなることが分かります。
出典:令和8年度第2学期 都立転学・編入学の実施結果【全日制総括】(2026-10-02)
出典:令和7年度第2学期 都立転学・編入学の実施結果【全日制総括】(2025-09-26)
出題範囲と面接で見られること
全日制高校の転入試験は、国語・数学・英語の3教科と面接で行われるのが一般的です。試験問題は各高校が独自に作成するため、出題内容や範囲は学校によって異なります。過去問題は市販されていないため、欲しい場合は志望校へ問い合わせてみてください(配布できない場合もあります)。
面接では、「なぜ今の高校を転校したいのか」「なぜ本校を志望するのか」が問われます。全日制の転入試験を受ける予定の方には、私は「不登校や体調不良といった理由だけで終わらせず、『転校先で何に取り組み、どう過ごしたいか』という前向きな意欲を伝えることが大切」とお伝えしています。
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【公立・私立別】自分の場合は転校できる?
転校できるかどうかは、今の高校と転校先の組み合わせによって条件が異なります。相談に来られた方には、まず「今の高校は公立か私立か」「転校したい高校は公立か私立か」を確認します。
ここでは、公立・私立間の転校や全日制から通信制への転校について、「自分の場合はどうなる?」という疑問に答える形で解説します。
公立から公立(同じ都道府県内)は原則「やむを得ない事情」が必要
同じ都道府県内の公立高校同士の転校は、原則として一家転居などの「やむを得ない事情」が必要です。しかし、自治体によっては例外規定があります。
例えば東京都では、転居者向けの「区分1(転勤等による都外からの一家転住者)」とは別に、一般の都内在住者が出願できる「区分2(一般)」の募集枠を設けています。
埼玉県では志願先の校長が「特別な事情」と判断すれば出願が認められます。
大阪府でも各学期の開始時期に「希望等による転学」の機会があります。こういった事例もあるため、「県内での公立間の転校は無理」と決めつけず、お住まいの自治体の基準を確かめることが重要です。
私立と公立の行き来、私立から私立は学校ごとの判断
私立から公立、公立から私立、私立同士の転校は、受け入れ先の学校や自治体によって条件が異なります。
特に私立高校では、欠員があるか、転入試験を受けられるかに加えて、今の高校で修得した単位を転校先でどこまで認めてもらえるかが重要です。同じ科目名でも、学習内容や単位数などが異なる場合、単位が認められない場合があるため注意が必要です。
なお、私立から公立へ転校する場合は、転入先の公立高校が定める応募資格を満たす必要があります。
詳しい手続きや必要書類の確認方法については、以下の記事で解説しています。
全日制から通信制高校への転校は難しくない
全日制高校から通信制高校への転校は、制度上のハードルが低いのが特徴です。多くの通信制高校では随時または毎月1日付での転入を受け付けており、全日制のように「欠員が出ないと募集がない」というケースはほぼありません。
選考も書類審査と面接(または作文)が中心で、学力検査を行わない学校が大半です。
また、これまでに修得した単位や在籍期間は原則として引き継げるため、スムーズに移行できます。
転校を決める前に整理しておきたいこと
全日制への転校の現実を知ったうえで、次に考えたいのが「本当に転校が最適な選択なのか」ということです。転校により環境を変えられる一方、悩みの原因によっては、転校先でも同じ問題に直面する可能性があります。
ここでは、相談でよく聞く誤解と、転校によって解決すること・解決しないことを整理します。
「1年生の時しか転校できない」「退学しないと転校できない」はよくある誤解
「高1でなければ転校できない」「先に退学しないと転校できない」というのは、よくある誤解です。高校の転校について正確な情報に触れる機会が少ないため、こうした疑問を持つ方も少なくありません。
実際に相談では、「学年が変わる時期など、限られたタイミングでしか転校できないのか」という質問をよく受けます。全日制は学期ごとの募集が中心ですが、通信制高校は入学時期が柔軟で、毎月入学を受け付けているところもあります。学年についても、転入の合格者は高1が多い傾向はありますが、高2・高3でも転入できる学校があります。「高1でなければ転校できない」と考える必要はありません。
「先に辞めないと転校できないのか」という質問も寄せられます。転校するために、今の高校を退学する必要はありません。在学したまま転入先を探し、転入の手続きを進めることができます。退学せずに転入することで、空白期間をつくらず、スムーズに転校できます。
一方、退学すると「編入学」となり、転入に比べて、募集時期や応募条件などで不利になる場合もあります。
また、退学すると履歴書にも中途退学の経歴が残ります。そのため、転校を希望する場合は、退学せずに転入の手続きを進めることが大切です。
転入と編入の違いや、手続きなどの詳細は以下の記事で解説しています。
編入と転入の違いとは?転校・転学との違い、時期・単位・卒業時期・履歴書を比較
今の高校が合わないとき、転校で解決すること・しないこと
私たちが受ける相談でも、人間関係の悩みや学力不足、学校の規律が合わないといった理由から欠席が増え、先生から進級の厳しさを告げられて転校を考え始める方が多くいらっしゃいます。
環境を変えることで、特定の人間関係のトラブルや、学校の校則や雰囲気が合わないことは解決するかもしれません。一方で、自発的に学習や活動に取り組む「一定の自立」が求められる点は、学校を変えても変わりません。
転校先でも人間関係は築いていく必要があります。また、勉強や部活など取り組むことは変わっても、「自分が行動した分だけ将来の可能性が広がり、継続しなければ広がらない」という点は、どの学校でも同じです。
転校だけを急ぐのではなく、教育委員会の相談窓口やスクールカウンセラーに相談するなど、今の高校に残る道も含めて落ち着いて検討することが大切です。
全日制が難しくても、通信制高校とサポート校なら転校の道がある
全日制高校への転校が難しい場合でも、通信制高校やサポート校という選択肢があります。私が相談を受ける際は、まず通信制高校で高校卒業を目指す仕組みを説明し、そのうえでサポート校を利用するメリットや、自分に合った学び方を一緒に考えていきます。
転入のハードルが低く、単位と在籍期間を引き継げる
通信制高校は転入のハードルが低いうえ、全日制高校で修得した単位や在籍期間を原則として引き継げるため、同級生と同じ3月の卒業を目指しやすいのが特徴です。
ただし、年度途中の転入では履修中の科目の単位がまだ確定していないため、転入時期によって引き継げる単位や、その年度中に履修できる単位数が変わります。
特に高2・高3での転入は卒業時期に直接関わってくるため、事前に現在の単位の修得状況を確認しておくことが大切です。
全日制への転校を検討したあと、通信制高校へ切り替えるケース
私が相談を受ける中では、最初は全日制への転校を考えていても、転校先の全日制でも出席日数が求められることや、通信制高校なら年度の途中でも柔軟に受け入れてもらえることから、通信制に切り替える方が多いと感じています。
また、保護者は早い段階から「通信制も選択肢に入れよう」と考えていても、本人は「できれば全日制に残りたい」と考えていることがあります。そうした場合も、全日制への転校の可能性を調べたうえで、通信制ならどのような学校生活ができるのかを一緒に考えていきます。
転校は「全日制か通信制か」の二択をすぐに決めることではありません。どのような環境なら無理なく通い続けられるか、卒業までどのように学習を進められるかを考え、本人が納得できる進路を選ぶことが大切です。
転校を決めたら、今の高校にはどう伝える?
「今の高校に転校したいと言い出しづらい」と感じる方もいるでしょう。転校するかどうかにかかわらず、出席不足や単位への不安があるなら、早めに学校へ相談しましょう。今の学校に残る道も含めて建設的に話し合うことができます。
転入手続きでは、在籍校に転学照会書や成績・単位修得証明書、調査書などを作成してもらう必要があります。調査書の作成には10日ほどかかる学校が多いため、翌月からの転入を希望する場合は、転入の3週間前には動き始め、全体では1か月程度の余裕をみておくと安心です。
転校は決して特別な選択ではありません。転校を希望する生徒に対応する手続きは学校側も慣れているため、必要以上に身構えず、まずは相談してみてください。
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通信制高校サポート校「HR高等学院」をご紹介
全日制高校同士の転校は制度上のハードルが高い一方、通信制高校への転入は、転入時期や学校選びの幅が広い選択肢の一つです。
通信制高校だけでは学習や学校生活に不安がある場合も、サポート校と組み合わせることで、無理なく高校卒業を目指せます。
HR高等学院は、提携する通信制高校(鹿島山北高等学校または鹿島学園高等学校)に同時入学し、高校卒業資格の取得を目指すサポート校です。転入や編入は毎月1日付で随時受け付けており、選考は書類審査とオンライン面談のみで、学科試験は実施していません。
私たちのキャンパスでは、在籍する学生の8割ほどが不登校を経験しているため、新しい環境に不安を感じる学生も少なくありません。ですが、そういった気持ちに寄り添い、コーチが月1回、1対1で対話しながら、学習やHR高での生活、進路について継続的に伴走しています。
「転校したいけど通信制高校ってどんな感じなんだろう」と思ったら、気軽に説明会や個別相談会に参加してみてください。
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高校の転校についてよくある質問
最後に、転校について、よく相談される質問と回答をまとめました。不安や疑問を解消し、転校を検討する際の参考にしてください。
転入試験に落ちたらどうなりますか?
全日制の転入試験に不合格だった場合は、在籍校に残ったまま次の募集を待つか、通信制高校への転入を検討するのが一般的です。
なお、埼玉県のように試験日が重ならなければ公立高校を複数校受検できる自治体もあります。
引っ越し以外の理由でも転校できますか?
引っ越し以外の理由でも転校できますが、公立は自治体の要件、私立は学校ごとの判断によって異なります。私は、まず希望する転校先の募集条件を確認するようお伝えしています。
詳しくは、こちらの記事の「公立から公立(同じ都道府県内)は原則『やむを得ない事情』が必要」の章をお読みください。
また、全日制の転校での、ご自身のケースに合わせた詳しい手続きや条件については、以下の記事をご覧ください。
転校すると1年生からやり直しになりますか?
現在の高校に在学したまま「転入学」を行えば、前籍校での修得単位と在籍期間を引き継げるため、原則として1年生からやり直しになることはありません。ただし、先に退学届を出して「編入学」の形になると、募集時期や単位の扱いが変わるため注意してください。


