「うちの子は、もう何ヶ月も部屋から出てこない」
「このまま引きこもりが続いたら、将来どうなってしまうんだろう」
お子さんが学校に行けなくなり、自室にこもりがちになると、保護者の方はこうした不安を抱えずにはいられないと思います。
私(三輪 千恵)は通信制高校サポート校「HR高等学院」で、不登校や引きこもりを経験した学生たちと日々向き合っていますが、ご相談に来られる保護者の方の多くが、出口の見えない不安の中にいらっしゃいます。
ただし、これまで多くの学生を見てきて感じるのは、引きこもりは「終わらないもの」でも「取り返しのつかないもの」でもないということです。きっかけや環境が変われば、学生は驚くほど変わっていきます。
この記事では、高校生の引きこもりについて、その定義や原因、そして保護者の方ができることを、現場での体験を交えながらお伝えしていきます。お子さんへの関わり方に悩んでいる方の、何かひとつでもヒントになれば幸いです。
引きこもりの定義
「引きこもり」と「不登校」は、似ているようで定義が異なります。
まず、不登校は、文部科学省が以下のように基準を定義しています。
何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるため年間30日以上欠席したもののうち、病気や経済的な理由によるものを除いたもの
引用元:不登校の要因分析に関する調査研究 報告書 (令和6年3月公表)
不登校は、あくまで「学校に行っていない」状態を指す言葉ということが分かります。
一方で、引きこもりは、厚生労働省が以下のように基準を定義しています。
様々な要因の結果として社会的参加(就学、就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態を指す現象概念(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)
引用元:「ひきこもり」の定義など|厚生労働省
つまり、引きこもりは「家から一歩も出られない状態」だけを指すのではなく、社会的なつながりを避けて自宅中心の生活が続いている状態を、幅広く捉える言葉だと考えていただくとよいと思います。
実際に学院でも、引きこもりを経験した学生は在籍しています。割合としては、ほとんど外に出られない状態の学生は全体の1割に満たないくらいですが、決して珍しいケースではありません。
引きこもりを経験したタイミングとしては中学生の頃が多く、なかには小学生のうちから外に出づらくなっていた学生もいます。
そして、引きこもりの状態は学生によってさまざまです。
中学校までは出られなかったけれど、高校入学を機に「外に出る」と決めて踏み出した学生もいれば、オンラインで学びながら、今もほとんど外に出ない生活を続けている学生もいます。
引きこもりと一口に言っても、その姿は一人ひとり違うというのが、現場で接していての実感です。
高校生の引きこもりはいつ終わる?
「引きこもりが、いったいいつまで続くのか」これは、保護者の方が最も知りたいことのひとつだと思います。
正直にお伝えすると、「いつ終わる」と明確に言い切ることは難しいです。ただ、引きこもりからの回復には、大きく分けて二つのパターンがあるように感じています。
ひとつは、何かのきっかけを境に切り替わるパターン。もうひとつは、時間をかけて少しずつ変わっていく、グラデーションのようなパターンです。
前者のきっかけとして多いのが、高校入学のタイミングです。進学という節目は、それまでの人間関係や環境を一度リセットできる機会でもあります。
実際に学院でも、中学校までは外に出られなかったけれど、高校に入るタイミングで「ここから外に出る」と自分で決めて踏み出した学生が一定数います。
節目だからこそ、本人にとっても気持ちを切り替えやすく、良いきっかけにつながりやすいのだと思います。
一方で、グラデーションのようにゆっくり変わっていく学生も、もちろんいます。
たとえば、もともと人と関わること自体に苦手意識があった学生が、少しずつ人と関われるようになり、それをきっかけに外へ出ていく、というように、段階を踏んで回復していくケースです。
印象に残っているのは、入学した当初は家族以外の誰とも話せなかった学生が、最終的に一人で海外に留学するまでになった例です。
この学生は、まさにグラデーションで変化していったタイプでした。1年というスパンの中で、それだけの変化の幅が生まれることもあるのです。
ですから、「いつ終わるのか」という問いに、明確な期限をお答えすることはできません。その中でも、きっかけとなる節目や、安心して関われる環境があれば、学生は確実に変わっていきます。
焦らず、その変化を待つことも、ときには必要なのだと思います。
将来はどうなる?社会復帰は難しい?
引きこもりの状態にあるお子さんを前にして、「この子は将来、社会に出ていけるのだろうか」と不安に思う保護者の方は、とても多いと思います。
学校に行けない時期が続くと、その先の進路や自立した生活が、まったく想像できなくなってしまうのも無理はありません。
ただし、現場で学生たちと接してきた実感としてお伝えしたいのは、引きこもりを経験したからといって、社会復帰が難しくなるわけではないということです。
私が引きこもりの状態にある学生たちと向き合っていると、「もともと何もできなかった」のではなく、「できる力はあったのに、それを外に出すエネルギーを失っていただけ」だと気づかされる場面がとても多いのです。
何かのきっかけでそのエネルギーを取り戻したとき、学生たちは驚くほど主体的に動き始めます。
たとえば学院には、入学する前の1年間、誰とも話さずゲームばかりして過ごしていた学生がいました。その学生は今、入学希望者向けの体験会で、人を集め、企画を立て、司会まで自ら担っています。
かつての様子からは想像もつかないほど、前に立って場をつくる存在になりました。
もちろん、一人ひとりのペースは違いますし、すぐに何かが変わるわけではありません。けれども、好きなことや得意なことを入り口に、社会との接点を少しずつ取り戻していく学生を、私は何人も見てきました。
引きこもりは、その子の可能性が失われた状態ではなく、エネルギーを充電している時期なのだと捉えています。
ですから、保護者の方からご相談を受けたときには、こうした実際の学生たちの変化をお話しするようにしています。今は出口が見えなくても、本人の素敵なところは必ずあります。
社会との関わり方がわからず縮こまっているだけのことも多いので、そうした本人の良いところを一緒に見つけていくことが、社会復帰への第一歩になると考えています。
高校生の引きこもりの原因
引きこもりのきっかけは、学生によって本当にさまざまです。ひとつの原因だけで説明できることは少なく、いくつもの要因が重なり合っていることがほとんどです。
ただ、これまで多くの学生と接してきて、その根っこにある共通点をあえて挙げるとすれば、「自信を失った経験」があるように感じています。
何らかのかたちで自信をなくしてしまい、その結果として学校から足が遠のいていく。多くの学生に、そうした流れが見て取れます。
そして、この「自信のなさ」は、さらにいくつかの要素に分解することができます。ここからは、引きこもりの代表的な原因を、ひとつずつ見ていきます。
自分自身へ自信が持てない
数多くの原因の中でも、最も根本にあると感じているのが、自分自身に自信が持てないという状態です。
「自分なんて」という気持ちが強くなると、何かに挑戦することも、人と関わることも、すべてが怖くなっていきます。
後にご紹介する人間関係や勉強の悩みも、突き詰めれば「自信を失った」という一点につながっていることが多く、その意味で、自信のなさは引きこもりの出発点になりやすい要素だと言えます。
逆に言えば、小さな成功体験を通じて「自分にもできるかもしれない」と思えるようになると、学生は大きく変わっていきます。回復のカギも、この自信を取り戻せるかどうかにあるのだと、現場で日々感じています。
人間関係に不安がある
クラスメイトや先生との関係でうまくいかなかった経験は、自信を失う大きな要因になります。
友人とのトラブル、いじめ、あるいは「うまく馴染めない」という漠然とした居心地の悪さ。こうした経験が積み重なると、人と関わること自体に苦手意識が生まれ、教室という空間そのものが負担になっていきます。
学院でも、もともと人と関わることに強い苦手意識を抱えていた学生は少なくありません。
そうした学生が、安心できる関わりの中で少しずつ人と話せるようになっていく姿を見ると、人間関係の不安は、環境次第で和らげていけるものだと実感します。
勉強がうまくいっていない
授業についていけなくなることも、自信を失う典型的なきっかけのひとつです。
一度つまずくと、わからない部分がどんどん積み重なり、追いつくこと自体が難しくなっていきます。
「自分は勉強ができない」という思いは、そのまま「自分はダメだ」という自己否定につながりやすく、教室に向かう足取りを重くしていきます。
特に高校は、学習内容が一気に難しくなる時期でもあります。中学までは何とかなっていた生徒が、高校の勉強でつまずき、そこから不登校・引きこもりにつながっていくケースも珍しくありません。
特に理由はないが学校に行きたくない
「理由は分からないけれど、学校に行きたくないと言っている」保護者の方からは、こうしたご相談もよくいただきます。
ただ、私の感覚では、本当に理由がまったくないというケースは、ほとんどありません。多くの場合、理由がないのではなく、その理由を本人がまだ言葉にできていないだけなのだと思います。
たとえば「学校の学びに意味を感じられない」という学生もいます。大学に進みたいわけでもなく、「何のためにこれを頑張らなければいけないのか」がわからない。
一見すると無気力に見えても、その内側には本人なりの筋の通った理由が隠れていることが多いのです。
ですから、「理由がない」と決めつけず、本人が気持ちを言語化していくのを、じっくり待つ姿勢が大切だと考えています。
体調面に不安がある
体調の問題が背景にあるケースも少なくありません。
代表的なのが、起立性調節障害です。朝起きることがどうしても難しく、決まった時間に登校できない。本人の意思とは関係なく、体がついていかないのです。睡眠障害など、他の不調が関わっていることもあります。
このとき難しいのが、保護者の方との認識のずれです。外から見ると「ただ怠けているだけ」に見えてしまい、つい厳しい言葉をかけてしまうことがあります。
実際には「怠けているだけだ」と決めつけている保護者の方は意外と少なく、「本当にしんどいのか、怠けているのか、判断がつかない」という不安を抱えていらっしゃる方がほとんどです。
だからこそ、医療機関で診断を受けている場合は、その情報を学校側ときちんと共有することが大切になります。体調面の事情を事前に理解した上でサポートに入れるかどうかで、その後の関わり方は大きく変わってきます。
将来に対する不安がある
「自分の将来がどうなるのか」という漠然とした不安がきっかけで、教室へ向かう足を止めてしまうこともあります。
進路が思い描けない、社会に出ていける気がしない。そうした不安が大きくなると、目の前の一歩を踏み出すこと自体が怖くなっていきます。先の見えなさに押しつぶされそうになり、動けなくなってしまうのです。
この不安は、前述した「学びに意味を感じられない」という気持ちとも深くつながっています。
学校や社会に対する反発心
学校のルールや、社会の価値観に対する反発から、登校を拒むケースもあります。
「なぜこれに従わなければならないのか」という納得のいかなさが、学校という枠組みそのものへの拒否につながっていく。
一見すると反抗的に見えますが、その奥には、自分なりの価値観や、既存のあり方への違和感が隠れていることも少なくありません。
家庭内でのトラブルや環境の変化
家庭の状況が、子どもの心に影響することもあります。
家族間の不和、引っ越しや転校、保護者の離婚や再婚といった環境の変化は、子どもにとって大きなストレスになり得ます。
安心できるはずの家庭が落ち着かない状態になると、その不安定さが、学校生活にも影を落としていきます。
ゲームやインターネットへの依存
ゲームやインターネットへの依存が、引きこもりと結びついて語られることもよくあります。
ただ、ここで気をつけたいのは、「依存が引きこもりの原因」とは限らないということです。むしろ、別の場所で自信を失ったり、挫折を経験したりした結果として、ゲームに向かっている学生が多いように感じます。
理由はいくつかあります。たとえば、勉強で挫折した学生にとって、ゲームはレベル上げのように努力の成果がはっきり見える世界です。現実ではなかなか得られない達成感を、そこで味わうことができます。
また、引きこもっていると一日の時間がとても長く、やることもない。その「溶かせない時間」を埋める手段として、ゲームを選んでいることも少なくありません。
加えて、ゲームを通じた人とのつながりに居心地の良さを見出している学生もいます。
このように、ゲームやインターネットへの依存は、それ自体が問題の根本というより、別の悩みの「結果」として現れていることが多い。そう捉えておくと、本人への向き合い方も変わってくるのではないかと思います。
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高校生が引きこもりになった時の親の対応
お子さんが引きこもりの状態になったとき、保護者の方が「どう関わればいいのか」と悩まれるのは当然のことです。
ここでは、これまでの経験を踏まえて、保護者の方に意識していただきたい関わり方をお伝えしていきます。
その前に、ひとつだけ大切にしてほしいことがあります。それは、保護者の方自身が余裕を失わないことです。
ご家庭だけで抱え込んでいると、どうしても「何をやってもダメだ」というモードに陥りがちです。けれども、その焦りや行き詰まりの空気は、お子さんにも確実に伝わります。
子どもは親の余裕のなさを敏感に察し、「自分のせいで親を追い詰めている」と、かえって自分を責めてしまうのです。
保護者の方が余裕をなくしてしまうことが、実は最も状況を悪化させてしまう。これは、現場で何度も感じてきたことです。
ですから、これからお伝えする対応も、「完璧にやらなければ」と気負う必要はありません。肩の力を抜いて、できることから取り入れていただければと思います。
子どもの意見を尊重する
まず大切なのは、お子さんの気持ちや意見を尊重することです。
このとき避けたいのが、「どうしたら外に出てくれるの?」「何があったの?どうしてほしいの?」と、本人に直接問い詰めてしまうことです。
一見すると、子どもに寄り添おうとする自然な言葉に思えるかもしれません。けれども、こうした「どうしてほしいのか」を本人に聞くことは、実はとても酷な問いかけなのです。
引きこもっている本人も、自分が何を求めているのか、どうすればいいのかがわからずにいる状況がほとんどです。そこに答えを求められると、「うまく応えられない」という申し訳なさばかりが募り、かえって追い詰めてしまいます。
ですから、本人に解決策を求めるのではなく、まずはその気持ちや、今、出られない状態そのものを、否定せずに受け止める。「今はそういう時期なんだ」と尊重する姿勢が、何よりの土台になります。
子どもの変化や頑張りを褒める
引きこもりからの回復は、本人が「自分にもできるかもしれない」と思えるようになることから始まります。
だからこそ、小さな変化や頑張りを見つけて、それを言葉にして伝えてあげることが大切です。
ここで意識していただきたいのは、結果ではなく、ささいな兆しに目を向けることです。昨日より少し早く起きられた、好きなことについて少し話してくれた、など。そんな小さな一歩で十分です。
引きこもっている学生の多くは、自分の好きなものや考えに対してさえ、自信を失っています。
そんなとき、「それ、すごくいいね」「自分はこれが好きなんだ」と本人が再び思えるような声かけが、失いかけていた自信を少しずつ取り戻すきっかけになっていきます。
この場合には、通信制高校やサポート校の職員・スタッフなど、第三者を巻き込んでお子さんに接していくことも有効だと思います。
家族で一緒に過ごす時間を増やす
外に出ることが難しい時期でも、家庭の中で安心して過ごせる時間は、回復の大切な支えになります。
特に印象的だったのは、お子さんが少しでも興味を示した「変化の兆し」を、保護者の方が逃さずに、外に出る機会へとつなげていったケースです。
たとえば、「写真に興味を持った学生のために家族で旅行に出かける」など、本人が乗り気になったタイミングで連れ出すことが有効です。
「それだったら行く」という小さな気持ちを大切にすくい上げていく関わりは、家族にしかできないサポートだと感じます。
ただし、ひとつ気をつけたい点もあります。こうした働きかけが、親が声をかけ続けないと外に出られないという受け身の状態を固定してしまうこともあるのです。
理想は、本人が自分から外に出ていく機会を少しずつ作れるようになること。ですから、家族で過ごす時間を大切にしつつも、最終的には本人の主体性が育っていくことを意識していただけるとよいと思います。
担任の先生や学校側と連携する
ご家庭だけで抱え込まず、学校と連携することも非常に重要です。
家族だけで向き合っていると、視野が狭くなり、「もう何をしてもダメだ」と思い込んでしまいやすくなります。そんなとき、担任の先生など、親ではない第三者の目線が入ることには、大きな意味があります。
親とは違う立場から子どもを見てくれる人がいると、その子の伸びしろや良いところを、より正しく理解できるようになります。
保護者の方が一人で抱えている不安を、一緒に整理してくれる存在がいるだけでも、心の余裕はずいぶん変わってくるはずです。
他校への転校や転入を考える
今いる環境がどうしても本人に合わない場合は、転校や転入も、前向きな選択肢のひとつです。
特に、人間関係やコミュニティに苦手意識を抱えている生徒にとって、環境を変えることは、これまでの関係を一度リセットできる大きなチャンスになります。
新しい場所で、ゼロから人とのつながりを築き直せる可能性は決して低くありません。
なかでも通信制高校への転入は、時間に縛られにくく、自分のペースで学びながら卒業資格を取得できるという利点があります。
「決まった時間に登校する」こと自体が負担になっていた生徒にとっては、大きな救いになり得る選択肢です。転入のメリットについては、後ほどあらためて詳しくお伝えします。
学校以外の専門機関や支援団体に相談する
学校だけでなく、専門機関や支援団体といった外部の力を借りることも、ぜひ検討していただきたい選択肢です。
引きこもりに関する相談先は、実はさまざまに用意されています。こうした機関の大きな利点は、第三者が子どもを見てくれることで、保護者の方の認知の歪みを防げる点にあります。
不安が募ると、どうしても物事を悪い方向にばかり捉えてしまいますが、客観的な目が入ることで、状況を正しく理解しやすくなります。
また、本人だけ、あるいは保護者だけで面談を受けられる機関も多くあります。
親には話せないことを別の大人になら打ち明けられる、ということもありますし、保護者の方自身が気持ちを安定させるための支えにもなります。
具体的な相談先については、次の章で詳しくご紹介します。
高校生の引きこもりに関する支援機関
引きこもりに関する相談先は、公的なものから民間のものまで、多くの選択肢があります。ここでは代表的な支援機関を、それぞれの特徴とともにご紹介します。
ただ、種類が多いぶん、「結局どこに相談すればいいのかわからない」と迷われる方も多いと思います。そこで、まず大切な考え方をお伝えしておきます。
支援機関は、それぞれに雰囲気や色合いが異なります。同じ「相談する場所」でも、合う・合わないが必ずあります。
だからこそ、選ぶときに最も大切にしてほしいのは、お子さん本人と保護者の方が「本音を話しやすい場所かどうか」という点です。
たとえば、面談の予約までにとても手間がかかる、建物の雰囲気が硬くて気持ちが落ち着かない、など。そうした小さな要素も、通いやすさを左右します。
本音を話せて、なおかつアクセスしやすいかどうか。ここを基準に選んでいただくのが、一番だと考えています。
その前提を踏まえた上で、それぞれの機関を見ていきましょう。
ひきこもり地域支援センター
ひきこもり地域支援センターは、引きこもりに特化した公的な相談窓口です。すべての都道府県・指定都市に設置されており、引きこもりに関する専門的な支援を受けられます。
社会福祉士や精神保健福祉士、臨床心理士といった専門の支援員が在籍しており、本人だけでなく家族からの相談にも対応してくれます。
どこに相談すればいいか見当がつかないときの、最初の窓口として頼れる存在です。
参考:ひきこもりVOICE STATION|厚生労働省
スクールカウンセラー
スクールカウンセラーは、学校に配置されている心理の専門家です。すでに学校とつながりがある分、最も身近で相談しやすい存在のひとつだと言えます。
スクールカウンセラーの良さは、本人だけの面談も、保護者だけの面談もできる点にあります。これは、引きこもりへの対応において非常に大きな意味を持ちます。
というのも、お子さんの状態に不安を募らせるうちに、保護者の方自身がどんどん余裕を失い、不安定になってしまうケースが本当に多いからです。
そして親が不安定になると、その影響でお子さんもさらに不安定になっていきます。
スクールカウンセラーのような存在は、本人を支えるだけでなく、保護者の方やご家族自身が気持ちを立て直すための支えにもなってくれます。
家族全体の安定につながるという点で、とても心強い相談先です。
教育支援センター
教育支援センターは、自治体の教育委員会が設置している施設です。不登校の子どもたちが学校に戻ることや、社会的に自立していくことを目的に、学習支援や相談、居場所の提供などを行っています。
学校に行きづらい子にとって、自宅と学校の中間にある「もうひとつの居場所」として機能してくれる場所です。同じような状況の仲間と過ごせることが、安心感につながることもあります。
保健所・精神保健福祉センター
体調面や心の健康に不安がある場合に頼れるのが、保健所や精神保健福祉センターです。
特に、起立性調節障害や睡眠障害、あるいは精神的な不調が背景にあると思われる場合には、こうした医療・保健の専門機関が力になります。
医師や保健師、精神保健福祉士といった専門家に相談でき、必要に応じて医療機関につないでもらうこともできます。心身の状態を正しく把握する上で、重要な窓口です。
民間団体・民間施設
公的機関のほかに、フリースクールやNPO法人など、民間の支援団体・施設という選択肢もあります。
民間ならではの強みは、その柔軟さと多様さです。学習支援に力を入れているところ、居場所づくりを大切にしているところ、体験活動を重視しているところなど、団体ごとに特色があります。
それだけに、お子さんの興味や性格に合った場所を見つけやすいとも言えます。
先ほどお伝えした「本音を言いやすいか」という視点を持ちながら、ご家庭に合う場所を探していただくとよいと思います。
なお、当学院でも、学生の状況に応じて外部機関と連携することがあります。たとえば、明確な診断名がつくなど、私たちだけでは対応しきれないケースでは、スクールカウンセラーと連携を取りながらサポートにあたります。
また、中学時代にお世話になっていた地域のスクールカウンセラーの方と、入学前に1時間ほど面談を行い、その学生のことを丁寧に引き継いでいただくこともあります。
こうした連携を通じて、一人ひとりに合った支援の形を探しています。
保護者・高校生の方へ
ここまで、引きこもりの原因や対応、相談先についてお伝えしてきました。最後に、いま実際にお悩みの保護者の方、そして生徒のみなさんに、お伝えしたいことがあります。
まず、保護者の方へ。
ご相談に来られる保護者の方とお話ししていると、「うちの子はもうダメなのではないか」と、漠然とした不安に焦っていらっしゃる方がとても多いと感じます。
けれども、その不安をよくよくほどいていくと、実は状況はそれほど深刻ではなかった、ということが少なくありません。
たとえば「コミュニケーションが苦手で」とおっしゃっていても、よく聞けば、家族とは話せている。親戚とも会えている。
そうやって「できていること」をひとつずつ確認し、「では、誰となら難しいのだろう」と境界線を見つけていく。
すると、お子さんの状態が、ぼんやりとした不安から、具体的に向き合える課題へと変わっていきます。
大切なのは、まず保護者の方ご自身が落ち着いて、状況を正しく理解することです。そのために、第三者の力を借りることをためらわないでください。
家族だけで抱え込むと、どうしても視野が狭くなってしまいます。誰かと一緒に状況を整理するだけで、見える景色は大きく変わります。
そして、生徒のみなさんへ。
今、学校に行けなかったり、外に出られなかったりすることを、「自分はダメだ」と責めているかもしれません。
でも、それはあなたに力がないからではありません。
これまでたくさんの学生を見てきて思うのは、引きこもっている人は「できない人」なのではなく、本来持っている力を外に出すエネルギーを、一時的に失っているだけだということです。
あなたが「意味がない」と感じていることも、それは、今の自分が知っている選択肢の中だけで感じていることかもしれません。
視点が少し変わったり、新しいゴールが見つかったりすれば、その意味は後からついてくることもあります。だから、今すぐ答えを出せなくても大丈夫です。
あなたの好きなものや、考えていることには、ちゃんと価値があります。焦らなくていいので、自分のペースで、少しずつ前を向いていけたらと思います。
「社会で生きていける力」を。
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通信制高校サポート校「HR高等学院」をご紹介
通信制高校を選ぶときは、まずサポート校から決めることをおすすめしています。サポート校は、入学前の支援から、提携する通信制高校での卒業資格取得を目指す学習、日々の高校生活まで幅広くサポートしてくれる存在です。
特に、引きこもりや不登校を経験した生徒にとっては、安心して頼れる伴走者となってくれるでしょう。
通信制高校の学びをより充実させたい方には、サポート校のHR高等学院を活用するのがおすすめです。HR高等学院では、ビジネス・デザイン・テクノロジーなど社会で活きるスキルを学びながら、企業のプロジェクト参加や起業体験、商品開発といった実践的な活動に挑戦できます。
また、「失敗は挑戦の証」という考え方を大切にし、安心してトライ&エラーできる環境が整っています。中学時代に不登校だった方や、自信を取り戻したい方にも適しています。
人間関係に不安を抱える学生にとっても、学院は安心して過ごせる場でありたいと考えています。学院には、学力層の幅も広く、内向的な学生から外向的な学生まで、本当に多様な学生が集まっています。
さらに、関わる相手は、学生同士だけではありません。学院のコーチは、いわゆる「先生」ではなく、一人の人間として学生と向き合う存在です。学生たちからは「ちょっと経験値の多い友達」のように思われていることもあります。
誰と、どんな関係を築いていくか。それをコーチも含めて自分で選びやすいという環境も、学院ならではの魅力だと感じています。
まずは説明会や個別相談会で、学院や授業の詳細、通信制高校全体の仕組み、お子さんの将来に関する不安などを、お気軽にご相談ください。一人ひとりに寄り添いながら、最適な学びの形をご提案します。
最後に
ここまで、高校生の引きこもりについて、その定義や原因、保護者の方ができること、そして相談先までお伝えしてきました。
引きこもりというと、出口の見えない、深刻な状態のように感じてしまうかもしれません。
けれども、現場で多くの学生と向き合ってきて思うのは、それは決して「終わらないもの」でも「取り返しのつかないもの」でもないということです。
引きこもりは、その子の可能性が失われた状態ではありません。むしろ、力を出すためのエネルギーを充電している時期なのだと、私は考えています。
保護者の方にお願いしたいのは、どうか一人で抱え込まないでほしいということです。家族だけで向き合っていると、視野が狭くなり、「何をしてもダメだ」と思い込んでしまいがちです。
しかし、第三者の目が入るだけで、見える景色は大きく変わります。そして何より、保護者の方ご自身が心の余裕を取り戻すことが、お子さんにとっての一番の支えになります。
焦る必要はありません。お子さんのペースを尊重しながら、できることから少しずつ。その歩みに、私たちのような存在も、ぜひ頼っていただけたらと思います。
この記事が、いま悩んでいる方の、ささやかな一歩につながることを願っています。


